
こんにちは。「ブルくま」です。PDCの伝説的なプレイヤーであり、フライング・スコッツマンの異名を持つゲイリー・アンダーソン。彼の美しい放物線を描くスローに憧れる方は本当に多いですよね。
私自身も、あのように軽く投げているのにズドンと刺さる飛びに憧れて、何度も動画を見返しては真似をした経験があります。彼のスローは、力みが一切ないのに矢速があり、ボードに突き刺さる音が他の選手とは明らかに違うんですよね。
このページに辿り着いたあなたは、彼の使用しているバレルやフライトといった道具のスペックはもちろん、独特な4フィンガーでのグリップや握る強さ、そしてダーツの手離れが悪いといった悩みや、グリップが安定しないといった課題を抱えているのかもしれません。
また、彼のようなトッププロの持ち方や重心の意識を参考に、ご自身のダーツを安定させる方法を探しているのではないでしょうか。
この記事では、ゲイリー・アンダーソンの最新セッティング情報の詳細から、それを我々アマチュアがどのように取り入れれば上達に繋がるのかを、私の視点で分かりやすく紐解いていきます。単なるスペック紹介ではなく、なぜ彼がその道具を選んだのかという「意図」まで深掘りしていきますので、ぜひ最後までお付き合いください。
記事のポイント
- ゲイリー・アンダーソン愛用バレルのスペックと重心特性の違い
- 独特な4フィンガーグリップの握り方と再現するための手順
- ダーツの手離れや安定感を高めるためのアンダーソン流のコツ
- プロのセッティングを真似する際に注意すべき重要なポイント
ゲイリー・アンダーソンのセッティングを徹底分析

まずは、世界王者に輝いた彼がどのような道具を使っているのか、その「ギア」の部分にとことん迫ってみましょう。道具を知ることは、彼のプレースタイルを理解する第一歩になります。彼が選ぶ道具には、彼のスローイング理論が凝縮されています。
愛用バレルの特徴と重心の確認方法

ゲイリー・アンダーソンといえば、長年愛用していたストレートバレル「Phase 3」のイメージが強い方も多いと思います。バレル全体にダブルリングカットが施されたあの細長い形状は、どこを持っても同じ感覚で投げられる「THE ストレートバレル」として、世界中で愛される完成された名作でした。
しかし、現在彼がメインで使用しているのは「Phase 6」というモデルです。これは単なるモデルチェンジではなく、彼のダーツに対する考え方の変化とも取れる、非常に興味深い進化を遂げています。
「Phase 3」と「Phase 6」の決定的な違い
最大の違いは、形状と重心バランスの変更です。「Phase 3」は重心がセンター付近にある完全なストレート形状でしたが、「Phase 6」はバレル前方が太く、後方に向かって細くなる「フロントロード(前重心)」形状を採用しています。
スペック数値を比較すると、その意図がより明確になります。
| モデル名 | 形状 | 重心 | 全長 | 最大径 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| Phase 3 | ストレート | センター | 52.3mm | 6.35mm | 細長く、グルーピングに有利。ダブルリングカットのみのシンプルな構成。 |
| Phase 6 | フロントロード | フロント | 50.7mm | 7.2mm | 短く太い。前方の重みを感じやすく、グリップ位置が明確になる形状。 |
ご覧の通り、Phase 6はPhase 3よりも約1.6mm短く、逆に太さは約0.85mm増しています。これにより、ダーツの質量が前方に「ギュッ」と凝縮されたような感覚になり、軽い力でもバレルが前に飛ぼうとする力(推進力)を強く感じられるようになっています。
なぜ彼は「前重心」を選んだのか?
なぜ彼が長年の相棒を変えたのか、私なりに考察すると、以下の2つの理由が浮かび上がります。
- 感覚のガイドライン化: ストレートバレルは「どこでも持てる」のがメリットですが、逆に言えば「グリップ位置がズレやすい」とも言えます。前方が太いPhase 6の形状は、指が自然と定位置に収まるため、グリップの再現性が劇的に向上します。
- 加齢への対応: 長いキャリアの中で指先の乾燥や筋力の変化は避けられません。より「持っている感」が強く、少ない力でオートマチックに飛んでくれる前重心モデルが必要になったのではないかと思います。
ちなみに、Phase 6のバレル前方には、彼の2度の世界王座を象徴する「2本の青いライン」が入っており、デザイン面でも非常にクールな仕上がりになっています。
【マニア向け】幻のPhase 4や5はどうなった?
実はPhase 3と6の間にも、試行錯誤の歴史がありました。
・Phase 4:全長約55mmという非常に長いバレル。「Purist」シリーズとして展開された実験的なモデルでした。
・Phase 5:Phase 3と6の過渡期モデル。見た目はストレートに近いですが、カットなどの微調整が行われていました。
・Phase 1 & 2:初期モデル。Phase 2には窪み(スカラップ)があるなど、現在のスタイルとは異なるアプローチが見られました。
こうして見ると、Phase 6は長い実験を経て辿り着いた「進化の結晶」だと言えますね。
もし、あなたが「バレルに重みを感じにくい」「最近ダーツが飛ばなくなった」と悩んでいるなら、彼のように少し前重心のモデルを試してみるのも一つの手ですね。特に、リリースの瞬間にダーツの重みを感じながら「押し出す」ように投げたいタイプの人には、Phase 6のような形状はドンピシャでハマる可能性があります。(出典:Unicorn Darts 公式サイト)
フライトとシャフトのセッティング詳細

彼のセッティングで最も特徴的なのが、あの大きなフライトです。彼はUnicornの「Big Wing(ビッグウィング)」という、スタンダード形状よりもさらに表面積が大きいフライトを使用しています。一般的なスタンダード(UnicornではPLUS形状)よりも、約13%ほど面積が大きいと言われています。
なぜ大きなフライトを使うのか?
フライトが大きいと「揚力」が働きやすくなります。これにより、ダーツが空中でフワッと浮き上がるような、滞空時間の長い美しい放物線を描きやすくなるんです。また、空気抵抗も大きくなるため、飛び出し直後のダーツの暴れを強力に修正し、空中でビシッと姿勢を安定させる効果もあります。
シャフトに関しては、Unicornの「Gripper 4」のミディアムサイズを使用しています。長さは約46mm前後でしょうか。フロントロードのバレルに長めのシャフトと大きなフライトを組み合わせることで、重心位置を少し後ろに引き戻しつつ、矢の姿勢を強制的に安定させています。
このセッティングの最大の目的は、矢のお尻を持ち上げてボードに刺すという彼独特のスタッキング(ダーツを絡ませて入れる技術)を実現することにあります。アンダーソンのダーツは、ボードに対してフライトが少し上を向いた状態で刺さります。
これにより、後から投げるダーツがフライトの下を潜り込み、ガイドされるように同じ場所に集まるのです。
ゲイリー・アンダーソン流グリップの再現手順

彼のグリップは非常に独特でありながら、理にかなっています。一般的には親指と人差指でバレルを挟むのが基本ですが、アンダーソンの場合は「ポイント(ティップ)に指をかける」スタイルが有名です。これにより、バレルの全長を使わず、極端に前の方を持っています。
再現するための手順を整理してみました。
- 親指のセット:親指の腹全体ではなく、少し側面寄りを使い、バレルの下側に添えます。Phase 6の場合、前の太くなっている部分のカットにしっかりと引っかけます。
- 人差し指の包み込み:人差し指の付け根から第一関節付近で、バレルの前方(刻みがある部分)を上から包み込むように持ちます。親指と人差し指で「輪」を作るようなイメージではなく、上下から挟み込む形です。
- 中指(薬指)のアシスト:ここが重要です。中指(または薬指)を、バレルではなく金属のポイント部分に添えます。強く押すのではなく、下から支えてダーツの角度を感じ取るセンサーとして使います。
この「ポイントに指をかける」というのが最大のミソで、これによりダーツの仰角(上下の角度)を微調整し、リリースの瞬間のブレを防いでいると言われています。特に、ダーツの先端が下を向きやすい人には、この指の使い方は非常に参考になるはずです。
ダーツの持ち方4フィンガーを取り入れるメリット

ダーツの持ち方として4フィンガー(親指、人差し指、中指、薬指を使う持ち方)を取り入れる最大のメリットは、何といっても「セットアップ時の安定感」です。指の本数が増えれば増えるほど、ダーツを支える接点が増え、物理的にグラつきにくくなります。
特にアンダーソンのように「目のライン」にしっかりとセットアップしてから投げるタイプの場合、構えた段階で矢先が暴れてしまうと狙いが定まりません。2フィンガーや3フィンガーでは、親指と人差し指の支点がズレるとすぐに矢先がブレてしまいますが、4フィンガーならば、薬指や中指が補助輪の役割を果たし、常に一定の角度で構えることができます。
また、4フィンガーにすることで、ダーツを「筒の中を通す」ようなイメージで、真っ直ぐ引いて真っ直ぐ出しやすくなる効果が期待できます。指のガイドレールが長くなる分、左右へのブレが抑制されるのです。ただし、指が増える分だけ「手離れ」のリスクも高まるため、自分に合うかどうかは慎重に試す必要があります。
4フィンガーでバレルを安定させる指の配置

4フィンガーでバレルを安定させるためには、指の配置バランスが重要です。4本の指すべてで強く握ってしまうと、今度は手離れが悪くなり、ダーツを下敷きにしてしまったり、引っ掛けてしまったりします。
理想的な指の役割分担
・親指と人差し指:ダーツを支え、推進力を伝えるメインの指(エンジンの役割)。
・中指と薬指:ガイド役。リリースの邪魔をしないよう、そっと添えるだけ(ハンドルの役割)。
アンダーソンの場合、中指をポイントに添えることで「矢角(ダーツの上下の角度)」を感じ取っています。もし4フィンガーを試すなら、薬指はバレルを握り込むのではなく、下から支えるか、チップに軽く触れる程度にして、リリースの瞬間にスッと逃がせるような配置を意識してみてください。
具体的には、薬指をチップの下に潜り込ませる「下支え型」か、チップの側面に軽く当てる「側面ガイド型」のどちらかが一般的です。アンダーソンはどちらかというと「側面ガイド」に近い形で、ダーツの左右のブレも制御しているように見えます。いずれにせよ、薬指に力を入れないことが鉄則です。
ゲイリー・アンダーソンのセッティングを活かす技術

道具や持ち方を真似るだけでは、あの「フライング・スコッツマン」のような飛びは手に入りません。ここからは、彼のスローイング技術や意識の部分にフォーカスして、我々が取り入れられるポイントを解説します。
ダーツを握る強さはどのくらいが最適か

ダーツ握る強さについて悩む方は多いですが、アンダーソンのスローを見ていると、驚くほど力みがありません。彼のグリップ圧の最適解は、「ダーツが手からすっぽ抜けないギリギリの弱さ」と言えるでしょう。
強く握りすぎると、筋肉が硬直してスムーズな腕の振りが妨げられるだけでなく、リリースの瞬間に指がバレルに引っかかり、ダーツが下を向いたり左右にブレたりします。
イメージとしては、紙飛行機を潰さないように持つ感覚、あるいは生卵を割らないように持つ感覚です。もっと言えば、「持っている」というよりは「指の上に乗せている」感覚に近いかもしれません。
彼のようにリラックスして「腕の振り」だけで飛ばすためには、グリップ圧を極限まで抜くことが重要です。セットアップの段階で指先が白くなっているようなら、明らかに強く握りすぎています。一度深呼吸をして、ダーツを落とさない程度の力まで緩めてみてください。
ダーツのグリップが安定しない原因と対策

「日によってグリップが変わってしまう」「ダーツ グリップ 安定 しない」という悩みは尽きませんよね。特にアンダーソンのような複雑なグリップを真似しようとすると、日々の微細な感覚のズレに苦しむことになります。原因の多くは、指の位置を「感覚」だけに頼りすぎて、毎回微妙に違う場所を持ってしまっていることにあります。
対策として、アンダーソンのように「基準点(ランドマーク)」を決めるのが最も効果的です。彼の場合は「ポイントに中指を添える」という明確な基準があり、これがあるおかげで、バレルのどの位置を持つかが自動的に決まります。
あなただけの基準点を作ろう
・カットの切れ目を親指の爪で触る。
・メーカーのロゴの位置に人差し指を置く。
・チップの根元の段差に中指を当てる。
このように、毎回同じ場所に指が来るような「物理的な目印」をバレル上で見つけ、それを確認するルーティンを作ると、グリップの迷いが減り、驚くほど安定感が増します。
ダーツの手離れが悪い時に見直すべきポイント

ダーツ 手離れが悪いと感じる時、多くの場合、リリースポイントで意識的に指を「開こう」としすぎています。しかし、人間の反応速度には限界があり、意識して開こうとした時には、すでにタイミングが遅れていることが多いのです。
アンダーソンのリリースを見ると、指をパッと開くというよりは、「腕を伸ばしきる過程でダーツが勝手に飛んでいく」ように見えます。これは「プッシュスロー」の極意でもあります。
見直すべきポイントは、「手首を使いすぎていないか」です。手首を強くスナップさせようとすると、指に余計な力が入り、バレルを挟み込んでしまいます。その結果、引っかかりが生まれるのです。
彼のように肘から先を真っ直ぐターゲットに向かって伸ばすイメージを持ち、手首はあくまで腕の動きに追従するだけの「柔らかい関節」として扱うと、自然と手離れが良くなることがあります。
ダーツでしてはいけない投げ方とアンダーソンのフォーム

ダーツでしてはいけない投げ方としてよく挙げられるのが、「テイクバックで肘が大きく下がる」ことや「リリースで体が前に突っ込む」ことです。これらは視線のズレやリリースの不安定さを招く最大の要因です。
アンダーソンのフォームはこれらとは対極にあります。彼のセットアップは顔の横、高い位置に構え、そこから肘の高さをほとんど変えずにテイクバックし、リリースまで体が全くブレません。まるで機械のように正確な反復運動です。
注意点
無理に彼のフォームを真似て肘を高く上げすぎると、肩周りの筋肉が緊張し、逆にスムーズさを失うだけでなく、最悪の場合は肩を痛める原因になります。重要なのは「高さ」そのものではなく、「投げ終わるまで体軸をブラさない」という点です。自分にとって無理のない高さで、肘を支点として固定することを優先してください。
ダーツを上手く飛ばす方法とセットアップの重要性

ダーツを上手く飛ばす方法の核心は、スローそのものよりも「セットアップ(構え)」にあります。多くのトッププロが口を揃えて言うように、ダーツは「構えで8割決まる」スポーツです。
アンダーソンは、右目のライン上にダーツをセットし、ターゲットとダーツと目を一直線に結んでいます(アイ・ライン)。この時、ダーツの先端(チップ)がターゲットを正確に指していることが重要です。この「照準」が合っていない状態で投げ始めても、スローの途中で軌道修正することはほぼ不可能です。
まずはスローラインに立った時、ターゲットを真っ直ぐ見据え、そこにダーツを置く。そして、そのラインを崩さないように丁寧にテイクバックする。この準備動作を丁寧に行うだけで、飛びの質は劇的に変わります。焦って投げ急ぐのではなく、セットアップで一呼吸置き、「狙いが定まった」と確信してから始動するようにしましょう。
ダーツを上手くやるコツはリズムと脱力

ダーツを上手くやるコツ、それは「一定のリズム」です。アンダーソンのスローは非常にテンポが良いことで知られています。「構える(1)→引く(2)→投げる(3)」の1・2・3のリズムが常に一定で、迷いがありません。
セットアップしてから長く考えすぎて動きが止まってしまうと、筋肉が硬直してスムーズな動作ができなくなります。これを防ぐために、練習では自分の好きな音楽を頭の中で流すなどして、心地よいリズムで投げることを意識してみてください。一定のリズムで体を動かすことは、余計な力を抜く「脱力」にも繋がります。
また、呼吸もリズムの一部です。構える時に息を吸い、テイクバックで止め、リリースで吐く(あるいはその逆)など、自分なりの呼吸のルールを作ると、プレッシャーがかかった場面でも普段通りのスローができるようになります。
ゲイリー・アンダーソン セッティングに関するよくある質問

ゲイリー・アンダーソンの セッティングから学ぶ注意点

最後に、ゲイリー・アンダーソン セッティングを参考にする際のまとめと注意点です。
彼のセッティング(フロントロードバレル + 大きなフライト + 長めのシャフト)は、「しっかり腕を振って、ダーツを押し出せる人」に向いているセッティングです。特にBig Wingフライトは空気抵抗が大きいため、矢速がない人が投げると、ボードに届く前にダーツが垂れて(お辞儀して)しまう可能性があります。
プロの真似をするのは上達の近道ですが、違和感がある場合は無理をせず、シャフトを短くして飛びを鋭くしたり、フライトを少し小さく(スタンダードやシェイプ)して抵抗を減らしたりと、自分に合うように微調整していくことが大切です。「プロが使っているから正解」ではなく、「自分の投げ方にはどう合わせるか」を考えるきっかけにしてください。
彼の「安定感を求める姿勢」や「道具へのこだわり」を参考に、試行錯誤を繰り返して、ぜひあなただけの最高のセッティングを見つけてくださいね!